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コラム

(今日の一言)ゴーン元日産会長のデリバティブ取引

2019年4月18日 19:50

コラム

 作家の黒木亮氏が、ゴーン元日産会長が新生銀行と行ったデリバティブ取引を独自取材したとのことで話題になっています。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56123

 ゴーン氏の言っていることには少し嘘があり、報酬が円建てだったので、それをドルにする為替先物取引をしていたと言ってますが、単に円をドルに換えるだけであれば評価損など発生しません。それが20億近い評価損になり、追加担保が必要になるということは、何らかのデリバティブ取引をしていたということになります。

 黒木氏はゴーン氏の取引について「デリバティブ付きの、いわゆる『仕組み預金』なのだ」「ドルのプットオプションを売って、そのオプション料で預金の利回りを高めるという取引」と説明している。プットオプションの具体的な規模、ストライクプライス、期限等詳しいことはわからないが、契約されたのが2006-7年頃とのことです。

 この時期、同じような取引がたくさん契約され、それが銀行の大きな収益源になりまた。ポイントは、ドル円のプット・オプションを売って利回りを高めたという点です。大量の、しかも結構長期のプット・オプションが売られ、この時1年物ドル円のボラティリティは6.55%という歴史的安値を付けました。

 あの頃、2006-7年頃のマーケットは今と似ています。オプションが大量に売られたことで、ドル円は120円台という比較的高いところで(ドルプットオプションのデルタヘッジでドル買いが出る)ほとんど動かなくなりました。全く「参ったな」という感じのマーケットが連日続き、あまりにもドルが堅調なので、円高に行くようには微塵も感じさせませんでした。

 はっきりと分かっているわけではないですが、同じようなことが起こっているのかもしれません。現在ドル円の1年物ボラティリティは6.4%と、2007年よりも下がってきました。オプションが大量に売られているので、比較的高いところで動かなくなっています。状況証拠は似ています。

 2007年のときも、パリバのファンドがおかしくなり、ベア・スターンズがJPモルガンに吸収され、絶対に世の中はおかしな方向に行くと感じさせましたが、なかなか崩れませんでした。リーマン破綻の直前にはドル円は110円台まで戻っています。しかし、リーマン破綻後、75円台までドル円は下落していきました。

 ただ、今回も2007年当時と同様に、最終的に円高になるかどうか、それはわかりません。金融機関の経営は比較的健全です。国は巨額の債務を抱えていますが、インフレさえ起こらなければもっと債務を増やしても、それは合理的なことであるという理論がMMTだけでなく、主流派経済学もそのような意見になっています。マネタイゼーションはインフレにならなければ積極的に是認されると、大きく意見がシフトしてきたのがここ数ヶ月の論調の変化です。これは大きい。

 今、消費増税しない方が正しいと主流派の経済学者も考え始めています。おそらく、消費増税は撤回されるのではないかと思います。でも、何か不気味です。フリーランチがあるのだから、食べるのが合理的と言われていますが、少し腑に落ちません。

 ドルプットオプションが爆発して、2008年当時のように円高となるのか、それともマネタイゼーションから円安になるのか、今はわかりませんが、現状の低ボラティリティにはいつか終わりが来ると思います。そして、それは意外に近いかもしれません。

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