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コラム

(今日の一言)見ていて本当に面白い、自民党新総裁選挙

2021年9月17日 18:03

コラム

野党の存在感が限りなく小さい日本では、自民党総裁選が事実上の「政権選択選挙」なのでしょう。本気の政争が繰り広げられる唯一の場であり、様々な「あの手この手」が出てきて、見ている方は本当に面白い。

今のところ河野氏が優勢と言われています。しかし、河野氏が石破氏に協力を求めたのは、驚きでした。麻生氏が忌み嫌う石破氏と組むということは、決選投票で麻生派の支援がないということであり、瞬間、「悪手」に見えます。つまり、優勢とは言え、河野氏はそこまで追い詰められているのでしょう。

議員票383票、党員票383票、合計766票で戦われる1回目の投票で、党員票をできるだけ多く得て決着をつける、それが河野陣営の戦略になります。

「次期総裁にふさわしいのは誰か」という世論調査では1位河野氏、2位石破氏、3位は小泉氏となるのが常です。河野陣営は「河野+石破+小泉」の3枚看板で戦う構えをはっきり打ち出しました。人気上位3人が組むのですから、事情を知らない海外から見れば河野太郎楽勝にしか見えないでしょう。だが、その単純な必勝法が上手く行くとは限らないところが、日本の政治の厄介なところ。

1回目の投票では河野氏が勝利するでしょう。しかし、過半数を取ることができなければ決選投票です。

2位の候補が誰になるのかわかりませんが、高市氏であれ、岸田氏であれ、その候補を細田派(事実上の安倍派)96人、麻生派53人、岸田派46人で推せば、多少抜ける人がいても200人近くになり、過半数(議員票383票、都道府県票47票、合わせて430票の半分なので、216票)に近づきます。

今回は若手議員が自由投票を求めるので、派閥の押さえが効かないとかマスコミは報道していますが、決選投票では(どうせ)まとまって行動するでしょう。選挙が近いので、若手は派閥の支援がどうしても必要です。

では、二階派は河野支持に回るのでしょうか?それとも2位候補を推すのでしょうか。二階派が2位候補支持に回れば、この勝負は決まります。

しかし、二階氏は安倍・麻生氏と反目していると報じられていますが、本当に二階氏は安倍・麻生氏が支持する候補を推すことができるのでしょうか?

ここで高市氏の推薦人名簿を見ると、二階派が5人もいることがわかります。対して、岸田氏の推薦人名簿には一人もいません。二階氏は「高市」勝利に賭けているのがわかります。

高市氏は、当初は泡沫候補にしか見えませんでした。しかし、その泡沫を総理に押し上げる力があるのが安倍氏。依然として安倍氏の力は最強なのでしょう。

それでも、河野氏が1回目の投票で過半数を取ることができれば、河野新総裁の誕生です。

ところがすごい「奇手」が出てきました。野田聖子氏の出馬です。野田氏が出馬すれば、それだけ河野氏が1回目で過半数をとる可能性が低下します。

野田氏は常に首相を目指すと言っている人。チャンスがあれば何にでも飛びつくでしょう。いつも推薦人20人が集まらずに断念していましたが、今回は容易に集めることができました。

推薦人名簿を見ると、二階派ばかり8人もいます。

つまりこれは、二階氏が自らの生き残りを賭け、河野(背後には幹事長辞任を迫った菅首相もいます)新総裁を阻止し、安倍・麻生氏側に擦り寄ったとんでもない奇手だったのです。また、こうした策略を採ることができる二階氏は、ことの良し悪しは別として、感心させられました。伊達に長年権力を維持できたわけではないのです。

今回の総裁選は、事実上、河野氏VS高市氏です。

それは、大きな政治路線の対立でもあります。高市(事実上、安倍)氏の政策は、いわゆるアベノミクスの継続、超金融緩和と財政出動で景気回復を狙う政策ですが、規制改革にはあまり積極的ではなかったというのが本当のところ。また、コアの保守層の政策でもあります。

原発も一つの争点ですが、なぜ続けるのか、その説明はありません。米国との関係もあり、複雑ですが、彼らには防衛政策なのです。

対して、河野氏は合理的な政策です。現実に合わせて変節していると言われますが、規制を緩和して、日本全体の生産性を上げる政策を採るでしょう。

高市氏が新総裁ならば、プライマリーバランス凍結という政策を掲げているので、財政は拡大され、景気はよくなるでしょう。株も上がるし、円安になります。日本はMMT政策の実験場となり、目先は良いが長期的には「知らん」ということになります。誰が、財務相になるかがポイントになります。

対して河野氏は、金融政策に関しては特に意見はないと思われます。日銀に任せると、当たり前のことを言っています。合理的なので、金融政策で生産性が上がると思ってないからでしょう。

誰が新総裁になったとしても、今の日銀政策はすぐに変えようがありません。よって、政策継続ですが、河野氏の場合、金融緩和に対する政治的意思が薄い判断される可能性があります。円高リスクがあるかもしれません。しかし、長期的な株価には好影響のはずです。

この二人の戦いは、大きな路線対立の決戦の場です。もし河野氏が総裁になることができなかったら、政治生命的にかなり厳しいところに追い込まれるのは必定です。また、河野新総裁が誕生したならば、それは安倍路線・安倍支配の終わりです。新しい日本が始まることになります。

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